死んでたキツネ

 

 


今日、ネコが死んでた。

今日、車が事故してた。

 


飛び散ったガラスで、

死んだキツネを思い出した。

 


家の前の道路でひとり

死んでたおっきいおっきいキツネ。

 


小学生の頃だったか、

わたしは母に呼ばれて走り、

ぎょろっと目を開けて、横たわる

おっきいおっきいキツネを見ていた。

 


死体がたしかにそこにある。

だけどこわくもかなしくもない。

 


こいつが動いていた時を、

こいつが山を駆け一息吐く時を、

わたしは何も知らないから

そこにあるのはただのキツネで、

図鑑以外で知れたのは

おっきなおっきなバイクくらい

おっきいということだけでした。